2017 年8 月25 日

迷走・長寿の台風5号

迷走・長寿の台風5号

今年初めて日本に上陸した台風5号は、7月21日に南鳥島付近の北緯26.4度、東経161.8度で発生し、23日までは西に進んでいましたが、一転進路を南、東と変え、26日にかけて円を描くように一回転し、また西に進みました。

しかし、28日頃から31日まで進路を南西に変え、南下するなど迷走を繰り返しました。その後、北西に進路を変え、8月4日に九州の南、7日に和歌山県に上陸、8日には日本海に抜けて温帯低気圧になりました。

台風5号の経路図
気象庁Web サイトより

台風は、上空の風の影響により進行方向が決まります。一般的に、台風が発生する北緯30度以南では、東風が吹いているため西に進みます。その後、太平洋高気圧の縁をまわる時計回りの風により北上し、偏西風帯にはいると偏西風に流され、北東に進みます。台風自体は地球の自転の影響で北半球では、北に進む力を持っていますが、この力は上空の風が弱い時を除き、大きな影響を与えません。

7月23日3時の太平洋域の地上天気図には、太平洋高気圧がはっきり見られず、オホーツク海高気圧が関東の東海上まで張り出しています。また、北緯30度、東経170度付近には台風6号があり、二つの台風による「藤原の効果」(一口コラム参照)により、台風5号は台風6号を吸収した26日頃まで複雑な動きをとりました。さらに、28日まではオホーツク海高気圧や大陸からの移動性高気圧に頭を押さえられ南下しました。

台風が8月4日以降九州の南で足踏みしたため、奄美大島や屋久島では暴風雨が長時間続き、50年に一度の記録的な大雨を観測、名瀬市では総降水量が650㎜になりました。

7月23日3時地上天気図(アジア太平洋域)
気象庁Web サイトより

台風5号の寿命は18日間(平均5.3日)で、台風が消滅するまでの間に台風6号、7号、8号、9号、10号、11号と6個の台風が発生するなど長寿台風でした。なお、長寿台風の一位は1986年の台風14号の19日6時間です。

梅雨明け以降天候不順

7月下旬から天候不順が続いており、北日本の日本海側と九州、中国地方の一部を除いて日照不足になり、特に、東北地方の太平洋側、関東地方では日照時間が平年の60%以下になりました。気温は、日照不足の影響から、北海道から関東地方の太平洋側では低く、東北地方の一部では2℃以上低い地域も見られました。一方、西日本では高めで、特に沖縄、九州、四国地方では平年を1℃以上上回るところが見られました。

また、降水量は、北海道及び関東、中四国、九州地方の一部を除いて平年より多く、東海、北陸、近畿地方北部では平年の3倍以上を観測したところがありました。

この原因は、平年には見られないオホーツク高気圧が7月末に出現し、8月にはいっても停滞し、それに伴う北東からの冷たく湿った気流の流入が続きました。さらに、夏を代表する太平洋高気圧が南に偏り、本州付近への張り出しが弱かったためです。

7月19日~8月17日 日照時間の平年比(%)

北・東日本太平洋側の天候不順の要因
気象庁Web サイトより

岐阜でも梅雨明け以降は、日平均気温はほぼ平年並みでしたが、降水量は平年の1.9倍、日照時間は平年の67%しかありませんでした。

本コラム048で報告した記録的短時間大雨情報は、7月20日~31日までにさらに11回出され、7月の合計は51回となり、過去5年間の23回を大きく更新しました。8月に入っても20日までに24回発表され、岐阜県内でも岐阜市、本巣市などで5回発表されるなど、不安定な天気が続いています。

先日、羽島市の北部で蓮の花を見かけました。蓮の花は仏教にゆかりがある花で、ちょうどお盆のこの時期に咲きます。以前は、お盆を過ぎれば朝晩の気温が下がり、多少しのぎやすかった気がしますが、最近は温暖化の影響でしょうか、寝苦しい夜が続きます。しかし、夜には秋の虫の鳴き声が聞かれはじめ、虫たちがしっかり季節を知らせてくれます。

蓮の花(羽島市内 撮影日8月3日)

一口コラム

藤原の効果とは

接近する2つ以上の台風がある場合に、それらが互いの進路に影響を与え、台風が低気圧性の回転運動をするなど、特徴的な動きをすることをいいます。台風以外にも気圧の谷や高気圧、偏西風などの影響も受け、また、相互作用を明確に示せないことから、気象庁では「藤原の効果」を使用していません。

第5代中央気象台(現気象庁)台長で、気象学者の藤原咲平氏が、1922年に提唱しました。

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