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天気を感知する生き物


  テイコク環境部では、動物や植物など、様々な生き物の調査を行っていますが、生き物の活動は天気によって左右される場合があります。例えば、飛行する昆虫や鳥は、雨の日は体温や体力を温存するために植物の陰などでじっとしている場合が多く、普通は晴れた日のほうがたくさんの個体を観察できます。

  また、「ツバメが低く飛ぶと雨」、「トンビが空高く輪をかくと晴」などといった「観天望気」と呼ばれる言葉は、自然現象や生き物の行動の様子から天気の変化を予測する天気のことわざのようなもので、現代のように天気予報をいつでも見ることができなかった古来より言い伝えられてきたものです。

  このように天気と関係のある生き物には様々なものがありますが、今回はそのような生き物のひとつ、雨の日に見られるホタルの幼虫について紹介したいと思います。

  ホタルと言えば、光りながら空中を舞う成虫の姿はよく知られていますが、幼虫を見たことがあるという方は少ないのではないでしょうか。というのも、日本で一般的によく知られているゲンジボタルやヘイケボタルは、幼虫の時は水中で生活しているため、普段は水の中を探さない限り見ることができません。しかし、4月中旬頃になると、雨の日の夜に水の中から這い出てきて、蛹になる準備を行ないます。

  幼虫が雨の日を選んで上陸するのは、これまで水の中で生活していた幼虫にとって乾燥は大敵であるため、急激な環境の変化を防ぐためではないかと言われています。それでは、水の中にいる幼虫がどのように雨天を感知しているのでしょうか。これは、春になって暖かくなってくると、上陸を控えた幼虫は川岸の水面の近くに移動してきて、頭を水から出し、直接雨天かどうか判断していると言われています。



当社業務で大垣市の杭瀬川で今年4月に撮影


当社業務で大垣市の杭瀬川で今年4月に撮影

  

  写真はゲンジボタルの幼虫です。ヘイケボタルが水田や流れの穏やかな用水路、小川に生息するのに対し、ゲンジボタルはヘイケボタルよりも流れのある川に生息しています。幼虫も成虫と同じように発光器をもっているため、雨の日の夜に川の護岸などをじっくり見ながら歩いていると、成虫より弱い光ではありますが、幼虫がゆっくり上陸している様子が観察できます。

  上陸した幼虫は湿り気のある土に潜り、40日程度の蛹の期間を経て6月頃から羽化して成虫になります。幼虫が歩く距離は、水から出てすぐに潜るのに適した土壌があれば数十cmで済みますが、何メートルもあるコンクリート護岸も登ることができ、10m以上歩いたという報告もあります。潜るのに適した土壌がすぐに見つかるか分からない状態で、これまで生活していた場所とは異なる環境に出て行かなければならないため、ホタルの幼虫にとって外界の湿気、天気の感知は重要なはたらきがあると思われます。

  環境ソリューション本部 環境部
谷  早央理